うつり木 18

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うつり木 18

水川は和室で茶を立てていた。 「ピシリ」新縁の茶碗にひびが入った。 静かに立ち上がり傍に置いてある短刀を握り素足で庭に降りた。天を仰ぎ短刀を振り上げ垂直に地面に突き立てる。庭の池の水面が波打つ。「己が地に帰れ、己が穴に帰れ、忌まわしき物、我が地に入るな、我ら魂に触れるな」短刀にビリビリと振動が伝わり右手の骨が砕けそうになるその瞬間、左手を鞘に添える。「おん、おん、おん、おん」大声で気を発する。「どくり」気味の悪い音と共に突き立てた地面から黒いヘドロの様な液体が溢れる。「ギャーーーー」水川にしか聞こえない悲鳴。辺りは鼻をつく異臭でむせかえる。だが水川は顔色一つ変えずに短刀の震えが収まるのを確認し、左手でくじを切った。
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