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うつり木24 対峙
水川家の玄関を出た時に「降るな」と水川が言った。今日は晴天で降水確率は10%のはずだと悟は思った。
水川は悟と沙織の顔を交互に見て言った。
「あれは己が力を維持するために雨を降らす、天からのではなく血の雨を」そこまで言って水川は天を仰いだ。「今1人犠牲になった」
その意味を理解し沙織はごくりと唾を飲み込んだ。
「さち」は堪能していた、吹き飛ぶ自転車、そこからアスファルトに叩きつけられた若い娘。恐怖と絶望、終わり行く命。流れ出る血を根に染み込ませながら震えている。
結界の中に水川達が足を踏み入れた瞬間「さち」は根を硬化させた。鋭く強く一振りで絶命させられる様に。
悟が言う「気付かれましたね」水川は「焦るなよ、奴は人の心の弱さにつけ込む」
沙織は頷いた。そして水川が念を込めてくれた数珠をポケットの中で握りしめた。
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