うつり木25 囲み

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うつり木25 囲み

水、風、土、それぞれの祓う力。それぞれの思い。 足元から根が襲うのではないかと沙織は恐怖で過呼吸になっている。様子に気が付いた悟が肩に手を置き「大丈夫、水川さんの結界がアスファルト一面を覆っている。あの雨は単なる水ではなく念を込めたものだからアスファルトの隙間を縫って水流となり僕らの足元を守っている」沙織は思わず水川を見た。 目の下は窪み今にも倒れそう。だけど眼光は鋭く気が満ちているのが分かる。 「気を付けなさい、あれの半径10メートル以内は結界の力が弱い。先程犠牲になった命はそこで根にやられたのだ」 水川は歩きながら説明してくれた。 水は南、風は北、土は東に立つ。そこに「気」が溜まり己が力を最大限に引き出してくれる。「西は?」悟が聞いた時水川は言った。「西は音が力を発揮する場、だが今はその術師が居ない」 空を見上げ悟は小声で「父さん力を貸してください」と言った。 「止まれ」水川が声を張り上げた。 犠牲になった人の現場検証は終わったのだろう、血溜まりはハッキリと残っていたが警察が現場保存のため「さち」の周辺は通行止めになっている。野次馬も警察も都合良く辺りにはいない。 各々がその方角に立ち、手に手に数珠を持った。悟は心の中で「さあ来い化け物。俺達の力でお前を祓い、この地から葬ってやる」
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