傀儡

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傀儡

それは父がアフリカに仕事で行ったついでに、僕に買ってきてくれた土産だった。雑に現地の新聞で包まれたそれを受け取った時は、心が踊った、何が入ってるのだろうと。「土産だよ、貴志」父が日焼けした顔で渡してくれた。だけど、包みを開いた時に、それは失望に変わった。赤土で作られたその奇妙な形の人形は、不気味でさえあった。「なんだか、幸せを呼び込む人形らしいぞ」その時の、父の誇らしげな顔は今でもよく覚えている。それはいつしか、部屋の隅に追いやられ、存在すら忘れていた。
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