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き・し・ん10
舞が玄関を開け
「ただいま〜あ〜疲れた〜」
と言い、台所から母親がエプロンをしたまま出てきた
「どうした、なんかあった」
と聞く。流石は母だ、いつもの疲れた〜とは何か様子が違うと感じたのだろう。
舞が私服に着替え麦茶を飲み、一息つくと、今日の学校で起きた出来事を話し始めた。
季節外れの綺麗な転校生、男子のどよめき、そこまでは適当に相槌を打っていたが体育館の事故の話になると不意に顔を上げて、舞の顔を見た。
「ねえその話し、もう少し詳しく聞いていい」
面倒くさいなあと思いながら、母の少し緊張した面持ちに不意に背中がゾワリとし、話し始めた。
母は
「源君怪我がなくて本当に良かったね。ねえ舞、10年前の高校で起きた事件のこと知ってる」
と聞いたので、なんとなく先輩達から体育館の裏で起きた忌まわしい事件の話をした。
「でもそれって都市伝説でしょ、今じゃトイレの花子さんみたいに皆んな思ってるよ」
と舞が言うと、珍しく真剣な表情で母は話した。その事件は学校のイメージが悪くなるので極力マスコミには伏せたらしいこと、暫く学校が休校になり、生徒達には「かんこうれい」がしかれ、夕方遅くで生徒が皆帰った後だったのでいつのまにか風化され、この町の住人は自然にその事には触れなくなったこと等を教えてくれた。
そして、それは本当に起きた事件であることも。
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