き・し・ん11

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き・し・ん11

次の日、クラスいや学校中は都市伝説の話で盛り上がった。正義も源も父や母親から10年前の学校で起きた事件の話を聞いた。 担任の中田先生は静かにと言いながら出席をとる。正義が如月さんの方を見ると校庭を見つめ何か独り言を呟いていた。 「潮目が変わったな、これもあやつの仕業か。人々の心に好奇と恐怖が生まれ、こちらの世界とあちらの世界の境が低くなる。侮れない、悔しいがかなりの強敵だな」 「如月、如月、おーい聞こえてますか」 生徒の間で失笑が漏れる。気が付いたのか、慌てて彼女が 「はい」 と少し赤らめた顔で答える。 先生は 「よーし全員元気で登校したな。昨日の今日だから体育館は使えない、皆んなの話からもう知ってると思うが、この学校で不幸な事件が起きた、でも良いか、その件と昨日の体育館の事故は関係ないぞ。怖い怖いと思うと柳も幽霊に見えると言うからな」 女子から 「何それ、古すぎてよくわからな〜い」 ざわついたホームルームが終わり、源が話しかける。 「正、親父も言ってたけどあの話マジだったんだな。俺達当事者だからマジビビるんだけど」 気が付かないうちに、如月さんが側に立っていた。源が少し驚いた顔で彼女を見る 「あまり気にしない方が良いと思う、そこに心を囚われると何でも悪く考えるでしょ」 綺麗な顔をしてズバリと真相を突かれた源は 「そうっすよね」 と言うのが精一杯だった。 俺はその声に弦の様な響きが重なるのを聞きながら、舞の方を見る。 女子同士で盛り上がり 「口裂け女がとかコックリさんがとか」 そんな言葉が聞こえてきた。 1時間目のチャイムが鳴ると、如月さんは源と俺を見て 「くれぐれもそちらに気を取られすぎない様に」 と言い残し席に戻った。 今朝からカラスが良く鳴くな。 ボンヤリとそんなことを考えながら校庭を見つめる。舞はまさか自分の身にあんな恐ろしいことが起きるとは知りもせずに。
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