き・し・ん17 異変

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き・し・ん17 異変

舞が久しぶりに登校した。 優しくでも鋭い視線で如月は彼女を見る。 源も正義もいつもの様になるべく自然に声をかけた。 力なく笑う舞の顔に疲労の色がみえた。 他の生徒も 「大丈夫、顔色良くないよ、無理しないでね」 と気遣う様に声をかける。 休み時間、校庭にチラッと視線を走らせ如月が舞に話しかけた。 始めはビクッと肩を震わせたが、話すうちに少しづつ舞の顔にも笑顔が見え、源も正義も近づいて話に入った。 舞の話は何処までが夢で真実なのか判断に迷ったが、どうやら体育館の事件から続いているのは源にも正義にも理解できた。 如月が胸ポケットから何かを取り出した。 着物の様な柄で包まれた四角いそれは「お守り」を連想させた。 彼女の話では、これは「良くないこと」から身を守る力がある札が中に入っている、それから自分が生まれた街で代々伝わる祭りにも使われること等の説明を受けながら、舞は時々涙目になったり、深く頷いたりして聞いていた。 その時 「カー」 と大きい声でカラスが鳴いた。 舞が明らかに狼狽した顔で校庭に視線を移す。 正義は見逃さなかった、如月が何かを口走り右手を小さく振り下ろした瞬間を。 「ドサ」っと何かが落ちる音がして、何人かの生徒が校庭を指差して 「死体、血、何あれ」 と口々に話している。 正義も恐る恐る校庭を見ると、半分になった黒い塊が落ちていた。 良く見なくてもそれがカラスの死体であることは間違いなかった。 「きゃー」 舞が如月に抱きついた。 源が驚いた表情で見ている。 正義は悟った、起きたのだ異変が、いや怪異が、この学校に。
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