き・し・ん19 告白その2

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き・し・ん19 告白その2

怖いけどその美しさに正義は視線を外さないでいた。如月の話は荒唐無稽で半分理解できないままに聞いていた。 彼女の年齢は300才であり、「鬼」の一族の正統な家系の生まれ。彼女の祖父は「長老」と呼ばれ、慕われ恐れられていた。祖父からの提案…それは人との共存。敵対する「邪鬼」と呼ばれる一族との長きに渡る戦い。 「鬼」の一族は「人」との結婚を認め、「生贄」を廃止し、その代わりに生き血を少しずつ「人」から集め、それを飲むことにより変化する「鬼」の人を喰らう渇望。 安心と平和の日々、だが長くは続かず「邪気」の夜襲。「人」を守り倒れていく仲間。 そして現在は「鬼」は人に紛れ、「邪気」は闇に紛れた。 正義はそこで初めて口を開いた 「鬼も邪気もどのぐらいの数が残ったの」 如月は少し寂しそうな表情になり 「大部分は滅んだの。生き残りは数名だと思う、私達も邪鬼も」 そして、星が丘高校は元は貧しい農村にあり、赤子を育てられない親達が子を捨てた場所に建てられた。捨てられた赤子の泣き声が 「ひもじい、ひもじい欲しい」 と聞こえ、何処からか「ひもじいが丘」と名付けられた。それが長い間に「星が丘」に変わったのだろうと。 「我ら一族も、奴ら邪鬼も表に出ることはなかった、そうあの高校での事件までは」 正義は恐る恐る聞いた 「あれは何が起こしたの、そしてそれが何故今になり俺達に影響しているの」 如月の目が赤くルビーの様に光り 「あれは元は救われない赤子の魂を安める為に建てられた社。だがいつのまにか邪鬼が住み着き赤子の救われない念と魂を喰らい力をつけ、次に人間の魂を喰らい、今度は正義達を狙っている」 「何故俺達が?」 正義が聞くと 「それは守りの家に生まれた貴方達の魂を喰らえば絶大な力を得ることができるから」 彼は理解した、邪鬼は再びこの世界に闇をもたらそうとしているのだと。如月は全てを知っていてそれを止めにきたのだと。 「如月、本当の君は何者なの」 彼女は躊躇いもなく衣服を脱ぎ捨てた。 慌てて顔を逸らす。 「よく見て」 琴の旋律と彼女の言葉に逆らえずに視線を戻す。透き通る白い肌、その胸の真ん中に文字が刻まれていた。 「神」 間抜けな顔で訪ねる 「その意味って」 「そうね、貴方達人間には理解し難いけれど、鬼は魂を高き処に収めると想像を超える存在になるの」 彼女の言葉には他を圧倒する力がこもっていた。 「鬼神」 彼の口から思わず言葉が漏れた。
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