き・し・ん20怨煉

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き・し・ん20怨煉

「それ」は確実に日に日に力を増していた。 「ぐ ぐじょ ぎ ぎじゃらぎ じゃ じゃべゃ がおーわわぎぐ ぐぐぐ」 意味は不明だが「それ」は回りを威圧する。 カラスに見える影達が 「カーカー」と大群で空を覆う。 正義と話していた如月は裸身のまま社の白い天井を凝視して言う 「時が密つある。まずいなこれは、思ったより力をつけるのが早い」 正義は怖気が走るのを必死に堪えた。 本当に彼女を信じて良いのか、邪気に勝てるのか、舞や源はどうしているのだろう… それを見透かす様に 「怯むなその心が折れた時奴は喰らう己が魂を」 彼は掠れ声で聞く 「これから何が始まる、俺達はどうなるんだよ」 少し口角を上げながら如月は綺麗な顔で残酷な言葉を吐き出す 「何人かは犠牲になるかもしれない、いくら私が強くても全てを守ることは難しくそれだけ奴は力を得ているのだ」 それから少し声を張り上げ 「共に戦う覚悟はある、それとも何もせずに逃げて隠れる。まあ相手は相当手強いからね」 真っ赤な目で正義を見下す様に真っ直ぐに彼を見ている。彼は考える、人より少しだけ運動神経が良いだけの俺に何ができる、いくら守りの家に生まれたとは言え修行もしていないこの俺が。 「聞こえたでしょ、私の言葉に含まれる旋律を、見たでしょその力も」 正義は鼓動が早くなり、全て見透かされていたことに恐れと苛立ちを同時に感じていた。 そんなことはお構いなしに 「もう貴方は戦いの中にいる、逃げも隠れもできない。そして貴方が戦わなければ友達も沢山死ぬ」
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