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き・し・ん21 それぞれの思い
土日を挟み月曜日の朝。
舞は薄く化粧をしながら目の下の隈を気にしていた。
「あーあ、本当に夢ならば良いのに、まさかこんなに怖いことが私に起きるなんて」
深い溜息を吐き、如月、源、正義、それぞれの顔を思い浮かべ勇気を奮い立たせた。
「たく、マジで俺達で舞を守れるのか。あの恐ろしい話は直ぐには信じらんないけど、如月さんの言葉にはなんか分からないけどズシンときたもんなぁ」
源は鏡を見ながら無理に笑ってみた。
顔が引き攣っている。
無理もない、本来明るい性格の彼には非現実の恐怖は芯から心を凍らせた。
カバンの中の「守り」を何度も確認し、正義は学校への道程を急いでいた。
頭の中はまるで夢の中にある様で、昨日はほとんど寝ていない。
如月の正体、舞や源に降りかかる死への恐怖、けれど一番恐ろしいのは「邪気」の存在だった。
神々しい程に強く美しい彼女でも全てを守ることはできないと言っていた。
大きな姿見の前で前髪をかき揚げ、ギラギラと光る赤い目を凝視する。力は衰えていない、だが勝てるのか「あれ」に。
迷いを降り切る様に首を振り、社の扉を大きく開いて右手と左手を交互左右に振り
「あーあ、あーーーあ、あーーーーー」
と琴の旋律に乗せた。
舞い散る落ち葉が見えない刃物で次々と細かく引きちぎられる。
それはやがて小さな旋風と共に大きな庭をぐるぐると回転していた。
「ぐ、ぐらう、びゃ、びゃくにん、げげげ、ぐびしゃげ げ げ」
邪気は黒い影の中で薄汚れた着物を着て、校舎を見ている。その目には沢山の赤子の顔が現れては消え、消えては現れていた。
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