俺の朝は早い

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 じゃあ萌香って誰だ?   うちの隣に住んでいる風谷(かぜたに)さんちの娘さん。  幼い頃から隣同士で、共に成長してきた間柄。専門用語でいうところの幼馴染という奴。  同い年で今は同じ高校に通う同級生。クラスは違うけど。  昔から実に仲良しで、今だって別に仲は悪くはない。  なんで裏をかかなきゃならないかって? 色々あるんだよ。 「早いなら言え」  シリアルと牛乳を叩きつけるようにテーブルに置きながら、不機嫌そうにママンが言う。ママンは光を恵むと書いて光恵(みつえ)さんという。今のところ彼女から恵んで貰っているのは溢れんばかりの怒りだけど。 「情報漏洩を防ぐためだ。分かってくれ」 「お前の通学を諜報機関が見張っているとでも? 病院行く?」 「その心配は無用だ。そんな国際的な話じゃねぇ。恐れているのはご近所ネットワークだよ」  時として光の速度を超えると言われるご近所ネットワーク。  その波に乗ってしまったが最後、この地区全員が俺の登校時間を知る事になるだろう。技術を開発している人たちは、ご近所ネットワークを参考にして新しい通信携帯を考案してみてはいかがか。  まあ、全く持ってプライバシーが守られぬ、という現代社会にまるでそぐわぬ欠点があるけれど。 「誰があんたの通学時間を気にするってのよ」 「いるんだよ、一人。ヤバいのが」  それが萌香だ。まあ、ママンに何を訴えたところで理解はして貰えないだろうが。 「何? 苛められてんの?」 「違う。そんな俺の見てくれにマッチした話じゃない」  延長線上にそう言う話が浮上しない事も無いけどな。
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