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知念の用事を終わらせた俺は、職員室を出て売店へと走った。
頼む。何でもいいから味の付いたパンよ残っていてくれ。
「今頃来たって何にもないよ!!」
おばちゃんに履き捨てるように言われ、俺はその場に膝から崩れ落ちた。
まさか敗者のバターロールすら残っていないとは……。
こうなったからには、今から学食に行こう。
座席の確保は大変だろうが、最悪立ち食いうどん計画だ。
昼飯抜きで五時間目? それこそあり得ない。
落ち込んでいる時間は無いぞ、航大。さあ、次は学食に向けて走るんだ。
立ち上がり、踵を返した瞬間だった。
「こ・う・だ・い・君」
「ふひゃあ……」
いきなり背中をつつかれて、俺の腰はいとも簡単に砕けた。
「この腰抜けがっ!!」
おばちゃんの隙の無い罵声。
俺は心も折れそうになった。
こんな人を殺すタッチングができるのは一人しかいない。
「萌香……」
「正解。愛の力だね」
「べたべたすんなら余所行きなっ!!」
「とりあえず移動しようか」
「うん」
「お幸せにっ!!」
貶したいのか祝福したいのかどっちだよ。おばちゃんの方を見ると、満面の笑みで俺にサムズアップしてくれていた。良い人……なのか?
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