おのれ、寝不足!!

2/6
53人が本棚に入れています
本棚に追加
/80ページ
 知念の用事を終わらせた俺は、職員室を出て売店へと走った。  頼む。何でもいいから味の付いたパンよ残っていてくれ。 「今頃来たって何にもないよ!!」  おばちゃんに履き捨てるように言われ、俺はその場に膝から崩れ落ちた。  まさか敗者のバターロールすら残っていないとは……。  こうなったからには、今から学食に行こう。  座席の確保は大変だろうが、最悪立ち食いうどん計画だ。  昼飯抜きで五時間目? それこそあり得ない。  落ち込んでいる時間は無いぞ、航大。さあ、次は学食に向けて走るんだ。  立ち上がり、踵を返した瞬間だった。 「こ・う・だ・い・君」 「ふひゃあ……」  いきなり背中をつつかれて、俺の腰はいとも簡単に砕けた。 「この腰抜けがっ!!」  おばちゃんの隙の無い罵声。  俺は心も折れそうになった。  こんな人を殺すタッチングができるのは一人しかいない。 「萌香……」 「正解。愛の力だね」 「べたべたすんなら余所行きなっ!!」 「とりあえず移動しようか」 「うん」 「お幸せにっ!!」  貶したいのか祝福したいのかどっちだよ。おばちゃんの方を見ると、満面の笑みで俺にサムズアップしてくれていた。良い人……なのか?
/80ページ

最初のコメントを投稿しよう!