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後頭部をべしりとはたかれて起きた。
顔を上げると、目の前に男子の制服が見えた。
さらに顔を上げると、友人の宵町亮介が俺を見下すように見下ろしていた。なんでこいつ偉そうなんだろう、と思いつつ再び寝る事にする。
「おい、寝るな」
そこそこイケメンで背も高い宵町の長い手が、再び俺の後頭部を叩いた。
「だって眠いんだもの」
「友人と教室で出会ったら、まずはおはようだろ」
「おはすみ」
「そんなところの手を抜くな!! おーきーろー!!」
「何だよぅ。寝不足なんだよぅ」
「うるさい黙れ。今日の風谷さんの話を聞かせろ」
彼は萌香に惚れていらっしゃる。
俺が彼女の幼馴染で仲がいいと知ると、毎日この話を振ってくる。
「自分で見に行けよ」
「行けるか、俺はシャイなんだよ」
「はいはい、シャイシャイ」
「流すんじゃない。いいから風谷さんの話を聞かせろ」
「普通だったよ。平常運転」
朝からのあれやこれ、全部含めて。
「馬鹿野郎」
え? なんで今殴った?
「風谷さんに普通とかあるわけないだろ。あるのは可愛いか、すっごく可愛いのどっちかだ。どっちだ?」
「マジで知るか。自分で見に行け」
「無茶を言うな。朝からあんな神々しいお姿を拝んだら、そのままおれは卒倒してしまうかも知れないだろ」
「墓は立ててやるよ。アイスの棒に馬鹿とか書いて」
「勝手に殺すんじゃない。倒れるだけだ」
「で、後頭部強打して死ぬと」
「し・な・な・い!!」
朝から煩い奴だなぁ。
マジで眠いんですけど。
キーンコーンカーンコーン……。
ほら見ろチャイムなった。
「馬鹿、チャイムなっちゃっただろ。後で絶対聞かせろよ?」
嫌なこった。
こうして、俺の一日はあまり良くない形で始まった。
こういう日はロクな事が無いもんだ。
この予想は見事に当たる。良いことを予想しても当たらないのにね。
やんなっちゃいますよ、マジで。
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