聞こえない君に

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今日から新しい生活が始まる。 大学一年の春。 俺は一目惚れをする。 「じゃー大学がんばれー」 「おー!お前も歌頑張ってこいよー」 ンダホ号とンダホに別れを告げ俺は今日から通うことになった大学へと歩みを進める。 んっと.....教室はどこだー?俺が受ける学科の教室が見当たらず誰かに聞こうかと辺りを見回すとちょうどよくこちらに向かって歩いてくる人がいた。 「あのー○○学科って...ってあれ?」 俺は確かにこちらに向かって歩いてきたやつに話しかけた。 だが「無視かよ」そう、見事にスルーをかまされた。 なんだ? 今の若いやつは皆あーなのか?? それともなんだ? 見るからに俺よりも身長が高い。 見えなかったとでも言うんか?? なんだか腹が立って俺は走ってそいつの目の前に立ちふさがる。 「!」 「おい!人が話しかけてんだから少しは止まるなりしろよ!」 「..........?」 「何とか言ったらどーだよ!」 「..........」 長身の男はよくみるとイケメンの部類に入るぐらいの面をしていて、それでいて長身の整ったスタイル。 容姿端麗ってやつだ。 ってそんなことはいい! 今だ何一つ言葉を発しない男に更に腹が立って 「しゃべれねーのかよ!」 勢いまかせにそんなことを言ってしまった。 しまった。 さすがに言い過ぎた、そう思った瞬間 『はい。喋れません』 目の前にスマホ画面が出され、画面にはそう写し出されていた。 スマホから目を離し再び男を見る。 男は申し訳ない表情をしつつまた文を打つ。 『耳聴こえなくて。無視したわけではないです。すいません』 俺はとたんに自分が恥ずかしくなった。 「えっと......」 『気を使わせたならすいません。何か用事でしたか?』 男は慣れているとでも言うように会話を進めていく。 『あー、○○学科ってどこにある?』 男のスマホを借り、俺も文章で伝える。 文をみた男は 『俺も行くところです。一緒に行きますか?』 と画面を見せて笑った。 ...............その笑顔が可愛いと思った。 『お願いします』 なぜだか敬語でそう伝えると男はまた可愛い笑顔で笑い自己紹介をしてくれた。 『俺は政井将太。あなたは?』 『絹張涼』 『涼。よろしく』 『おう、よろしく』 これが、マサイと初めて会った時の出来事。 ここからもう俺はマサイにはまっていたのかもしれない。
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