体育祭

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▽ ● ▽ 総会が終わり2週間が経過頃には校内全体が体育祭ムードに染まっており、各クラスの体育委員が真剣に作戦を練っていたり、種目決めを行ったりと慌ただしく動いていた。 体育祭においての生徒会の仕事は体育委員が持ってきた計画書や書類に目を通し判を押すだけなのでそこまで忙しくはない。 まぁ当日は本部テントに居なければいけないが種目にはきちんと参加するつもりでいる。 正直運動がそこまで得意ではない為本音を言えば出たくないのだが、1人2種目以上と決まっている為やむを得ない。 そして今は教室で種目決めの真っ最中である。 「今から種目決めをしまーーす!希望競技は予め集計してあるので、人数の多い種目と少ない種目だけ調整をするよ〜」 教壇に立ってへらへらとした口調で話し合いを進めていく体育委員は黒板に素早く種目名と人数を書き写していく。 体育祭で行われる種目は、短距離走(100メートル)、長距離走(1000メートル)、玉入れ、二人三脚リレー、騎馬戦、借り物競争、クラス対抗リレーの計7種目ある。 僕の希望種目は玉入れと借り物競争だ。 希望と言ってもそれ以外の種目は出来ない。二人三脚と騎馬戦は他人と密着するから無理だし、徒競走系も足が速くないので論外なのだ。 「まず、多くなった種目は玉入れで、少ないのは騎馬戦だったから玉入れの人で立候補がなければじゃんけんして騎馬戦に移ってね〜」 そこ言葉を聞いてげんなりする。立候補者がいれば良かったのだが生憎名乗り出る人がいなかったのでそのままじゃんけんをすることになった。 幸いにもあと一歩の所で勝つことができ、騎馬戦に移らずに済んだのでほっとした。 負けた人は可哀想だが運なので仕方がない。 「リレーはこっちが勝手に決めるからな!今年は外部理系(1組)が絶対に優勝するぞ!!」 「「「おーー!!」」」 「外部文系(2組)なんかに負けてたまるか!」 気合十分のクラスメイト達は打倒2組!と闘志に燃えている。 この学校の生徒の6割が内部進学で花ノ宮へ進学するのに対して残りの4割の生徒は外部受験をする。高2の段階ではまだ4割だが、高3になるとぐっと人数が減り4割から3割に人数が減る。 その外部受験の生徒達は1組の外部理系クラスと2組の外部文系クラスに分けられる為、両クラスはお互いのことを常にライバル視しており体育祭ではそれが顕著に現れるのだ。 また外部受験をする生徒の殆どが国立大学の受験を希望する生徒で、その理由は私立大学で1番レベルの高い大学が花ノ宮だからというのもある。 僕はそこまで文系に対してライバル視はしていないけれど、切磋琢磨し合える関係なら別にいいと思う。 無事に種目決めが終わると、いつもの様に生徒会室へ向かう。 足取りがいつもり軽いのは仕事が少ないのと、じゃんけんに勝てたからだろうか。 生徒会室の扉を開けると既に三浦くんがいてので軽く挨拶をすると慌てて立ち上がろうとしたのでそれを軽く制す。 「お疲れ様です!何かお茶でも入れましょうか」 「いいや、大丈夫。それより体育祭の種目は決まった?」 「俺は二人三脚と長距離走と騎馬戦っす。シフト表作りしなきゃですもんね」 「騎馬戦…それは大丈夫か?」 「確かにアルファばかりの学校で騎馬戦はキツイですけど、まぁじゃんけんに負けてしまったので…仕方ないです」 あぁ、じゃんけんに負けたのか。ベータがアルファに混ざって騎馬戦は相当大変だが、三浦は運動神経も良いみたいだからそこまで心配する必要はないか。 初めはアルファに囲まれる生活に慣れていなかったせいか弱気だったけど、総会を通して少しは成長しているみたいだ。 「なにか困ったことがあったら何でも相談していいから」 「あ、ありがとうございますっ!だって俺達ベータにしか分からない悩みとか、そういうのを理解して貰えて相談出来るセンパイがいるのは心強いです」 「…そっか…ありがとう」 そう言って三浦は嬉しそうに微笑む。 僕は本当にいい後輩を持ったな…。 _______________“俺達ベータ”…ね。 その言葉が胸に引っかかり、チクッと何かで刺されたような痛みを心に感じだ。
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