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式典が終わり、教室へ向かうと生徒達の視線が瑞樹に降り注ぐ。
一部の生徒はアルファでないのに何故会長になれたのかと不信に思っているのだろう。
この学園ではオメガであることを隠す生徒の方が多いが、自らオメガであることを公然と言っている生徒も極稀に居る。
僕からすれば、この学園でオメガだと公言すること自体が自ら「襲ってください」と言っているようなものでしかないから全く理解出来ない。
“生徒会長が実はオメガだった”なんてことが知れ渡れば、第一に貞操が危ない。そして学園に自分の居場所は間違いなく無くなり、生徒会長の座から引きずり落とされるだろう。それだけは絶対に避けなければいけない。
特に男のオメガなんて珍しいから卒業出来たとしてもその後明るい将来などきっと訪れない。
こんな息苦しさをこれか毎日味わうと思うと溜息が止まらない。
表情一つ変えることなく窓際の1番後ろの自分の席に着き、鞄を下ろそうとすると隣の席らしい人と頭がぶつかった。
「あ、すみませ…」
「いやこちらこそ…って、あれ?隣の席森宮なんだね。よろしく」
え、隣の席って…
葉山はキラキラした笑顔で話しかけてきた。
まさか隣の席が葉山だなんて想定してなかった。
ただでさえ会長と副会長になり、かなりの時間を一緒に過ごすことになるのにクラスでの席も隣だなんて、オメガだとバレるリスクが上がってしまう
「よ、よろしく」
動揺していることを悟られまいと視線を逸らすが、葉山は構わず話しかけてくる。
「そういえばホームルームが終わったら生徒会の集まりあるよね?何時からだっけ」
「ホームルームが11時30分に終わるから、12時からお昼食べながらやるつもりだけど」
確か1年の書記と会計とは初めて会うのだが、あの生徒会長と副会長が選んだ人物ならそこまで心配しなくても良いだろう。
「俺は弁当持ってるけど、森宮は持ってる?」
「もう買ってある」
「ならそのまま一緒に生徒会室に行けるね」
「そうだね……ん?」
今、一緒にって言った?
「い、一緒に行くの?」
「え?だって同じクラスだし、会長と副会長なんだから一緒に居たっていいでしょ。なにか駄目な理由でもあるの?」
「…ない」
た、確かに…そうだが、何か上手く丸め込まれた気がするのは気のせいだろうか
それに葉山の笑顔はなんか胡散臭く感じるというか、整った顔笑顔過ぎて怖い。
「なら一緒に行こうか」
葉山が笑うと周りにいた女子達が頬を赤らめた。
やっぱりおかしい。
昔はこんな笑い方なんてしていなかった気がする。
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