放課後、君の隣で。

プロローグ

この世界には男性と女性とは別にアルファ、ベータ、オメガと呼ばれる三種類の第二の性が存在する。人口はベータが最も多く、次にアルファ、そして最も少ないのがオメガである。
何故第二の性が進化の過程で突如形成されたのか。その明確な原因は未だに判明していないが、数百年前に起きた急激な人口減少が原因ではないかという説が最も有力視されている。

_________もし神様が気まぐれでそれを人間に与えたなら、それはどんなに残酷で美しいものなのだろう。無力な僕らはその運命の渦の中でもがき苦しみ、やがてその底へと沈んでゆく。

“あぁ、なんて残酷で美しい運命なのだろう”

とある作家がそう残した言葉が脳裏を過ると思わず笑みがこぼれた。

「ふっ、…運命なんて不確かなものに僕は縋り付く気はない。やれるのものならやってみなよ」

そう己に刻み付けるかの様に言い放った言葉は、春の柔らかい空気に溶け込んで消えて行った。

誰も居なくなった生徒会室の窓から微かに暖かさを帯びた春の風が桜の花弁と共に流れ込む。

___________春の香りと、桃色の花弁と、懐かしいあの人匂いを乗せて。