昼下がりの探偵

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昼下がりの探偵

午後2時。 ヴ~、ヴ~。 「…………」 ヴ~、ヴ~、ヴ~~~。 「あー、くそっ!」 さっきから断続的に振動を繰り返すバイブレーションに耐えきれず、男はソファを飛び起きた。古いソファは、イヤな軋み音を立てる。 (くぁ~、(アッタマ)痛え…) 二日酔いの頭を抱え、家具を伝って、本棚の上のスマホを取りに向かう。 彼の名は月影太一(つきかげたいち)。 繁華街の真ん中の、廃ビルといっても不思議はないボロビルの2階で、ひっそりと探偵業を営む怪しげな男だ。 電話の主には、大方見当がついている。 さっき集金に向かわせた、事務員のみかるに違いない。 『通常の2倍の金を出す』 今回の依頼人(クライアント)は、イヤに羽振りのいい男だった。 久しぶりのまとまった金につい浮かれ、昨夜、馴染みのババアのバーで、しこたま酒を飲んでしまった。 ところが。 昨日支払うといっていた報酬が、昼になっても振り込まれない。 そのことをみかるから聞かされた太一は、大いに焦ったものの、安酒のせいで気分は最悪。 とても起き上がれないということで、嫌がるみかるに頼み込み、依頼人の家に向かわせたのが、正午前の話。
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