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事件は探偵を呼ぶ
太一は、急いで依頼人の家に駆けつけた。
いつもは、全くの平和であろう住宅街に、パトカーが放つ赤色灯の明滅は、いかにも不気味で不似合いだ。
そんな感傷にはお構い無く、太一は野次馬を押し退けて、[keep]の印字の警告テープを跨ぐと、件の家の庭に入った。
「せ、先生ぇ~~」
「こらっ、動いちゃいかんっ」
太一を見つけるなり、走り寄ろうとしたみかるだが、左右を固めた二人の警官に行く手を阻まれた。
「みかる君…」
太一は、沈痛な面持ちでみかるを見下ろす。
「たかが集金に、そこまでやらなくてもよかったのに。
心配するな。最近の刑務所は快適に過ごせるらしいから。むしろメシの質はうちより…」
「違いますっ。
うあ~ん、先生まで酷いや。僕、やってないのに~」
「あー、あんたが彼の身元引き受け人?」
騒いでいたところに、刑事がひとり玄関先から顔を出した。
警官達が敬礼したところを見ると、この現場の責任者のようだ。
他の捜査員とは違って、ピシッとしたスーツを着た彼は、太一を見ると“ウーン?”と怪訝な顔をした。
太一は、ぱっと顔を逸らす。
「お前もしかして…月影、か?」
「い、いえ。あっしはただの、通りすがりの旅の者で」
長い前髪でほっかむりを作り、逃げようとしている太一は逆に怪しい。
あえなく彼は、警官達に捕らえられた。
「んもー、何やってんの?先生。
間違いありません!
この人こそが、自称イケてるアラサー探偵、ホントは万年金欠探偵の、月影太一先生でーす!」
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