21人が本棚に入れています
本棚に追加
/16ページ
現場検証
現場はまだ、事件当時のままで保存されていた。
この家は、玄関を入るとすぐにドアがあり、リビングに繋がっている。
土地の狭い、住宅団地らしい間取りだ。
被害者は、リビングと玄関を隔てるドアの付近で仰向けに倒れていた。
緋色のネクタイが、首に不自然な形に巻かれている。
「被害者は岡本雄大、40歳。この家の主だ。死因は絞殺による窒息死。体温から、死亡推定時刻は午後12時から14時の間」
遺体を調べる太一の横で、麦田は淡々と説明する。
「ケガをしてるな。後頭部と拳に」
「ああ、後頭部は倒れた時に打ったもの。拳は、犯人と争った時のものってことだ。
なんだよ、もういいのか?」
「…ああ、いい。ところで麦田、あちらは?」
太一は、ビニール手袋を麦田に返すと、リビングの方を指差した。
ソファに、放心したような女が座っている。
「ああ、あれは岡本の妻、操子だ。事件当時、夫と一緒に家にいて犯人に襲われた。
ショックを受けているようだから、事情聴取は明日に…おい、太一?!
…ったく、相変わらずなんだから」
最初のコメントを投稿しよう!