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「おっしゃお疲れ。最後まで受けてて気持ち良かったよ!」
ラスト一球を捕った川端が立ち上がり、私たちはクールダウンをする。途中から数えていないので分からないが、五〇球近くは投げたのではないだろうか。流石にちょっと腰の辺りに張りが出ている。
「そっちが良い音鳴らしてくれたからだよ。やっぱり上手だね」
「早速お墨付きを貰えた。嬉しいなあ」
川端が相好を崩す。優築はこういうことをほとんどしなかったので、何だか新鮮だ。
「……なあ天寺、一つ聞いて良いか?」
と思っていたら川端は不意に表情を引き締め、私に真っ直ぐな眼差しを向ける。あまりに急な切り替わりに、私は一瞬たじろぐ。
「大学行っても、日本一目指すよね?」
「え? 当たり前じゃん」
「よし、それ聞いて安心した。高校で燃え尽きてたらどうしようかと思ったし。そりゃ高校での悔しさを晴らすためには、その先の舞台で頂点に立つしかないもんな」
高校での悔しさを晴らす。その一言が、私の胸に刺さる。そう、悔しいのは私だけじゃない。夏大で敗れた者は皆、その敗戦を引きずり続ける。その中で上のステージへと進み、雪辱を期すのだ。
「……ああ、そうだね。これからよろしく頼むよ」
「うん。こちらこそよろしく」
私は左手を差し出し、新たな相棒と拳を突き合わせる。空ではすっかり雲が消え、無数の星たちが輝き始めていた――。
go to next stage……
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