勉学に勤しむ者たち

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「よし、じゃあ今日はここまで。来週からは本格的な演習に入っていくから、そのつもりで臨むように」 「ありがとうございました」  進学校である亀ヶ崎高校は、一年を通して希望者に対する補習が開催されている。三年生にもなると各教科で受講者が一気に増え、一つの講座が複数のクラスに分けて行われることも珍しくなくなる。 「お疲れー。また明日」 「おう。じゃあねー」  本日の補習が終わり、教室から出てきたのは葛葉だ。彼女は一緒に受講していた友人と別れると、一人で駐輪場に向かう。そこで、同じく帰宅しようとしていた玲雄と遭遇した。 「お、玲雄じゃん」 「あ、葛葉。今補習終わったの?」  玲雄は自転車の籠に手提げ鞄を詰め込みながら尋ねる。今日は補習こそ受けていなかった彼女だが、放課後に図書室で自習をしていた。 「うん。途中まで一緒に帰ろっか」 「おっけー」  葛葉と玲雄は並んで自転車を曳き、校門を出る。時計の針は六時半過ぎを指していた。十月になって受験勉強に一層熱が入り、二人ともこの時間まで学校に残っていることが日常になっている。 「葛葉は最近どうなの? 順調?」 「何とも言えない。模試の点は取れるようになってきてるんだけど、志望校の合格判定が中々良くならないんだよね」 「あー、私もそんな感じ。先生はここから必ず上がってくるからって言ってくれるけど、そんな気配が全く無いんだよね」 「それめっちゃ分かる。こんなことならもっと前からしっかり勉強しておけば良かったなって思うよ」
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