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人には誰しも、一人一人に適した道がある。自分の長所や経験を活かし、世のため人のために尽くせるよう進むべき道があるのだ。私、城下風は今、その進むべき道に向けて努力している。
「城下、今回の模試良かったじゃないか。このままなら十分教知大に合格できそうだぞ」
「ほ、ほんとですか? ありがとうございます。頑張ります」
私が進むべき道。それは教師になること。そのために私は、教員養成に力を入れている教知大学への進学を目指している。夏休みに猛勉強をした甲斐もあり、九月終わりに受けた模試では上々の成績を残せた。この結果に満足せず、更に努力を重ねていきたい。
女子野球部に所属していた私は、曲がりなりにもショートのレギュラーを張っていた。しかし準決勝の試合で自らの不注意によって負傷すると、その影響で最後に飛んできた打球を処理できず、チームの逆転サヨナラ負けを招いてしまった。
後先を考えない自分勝手な行動が、仲間たちに大きな災いを齎す。私はそのことを身を以て思い知った。教師となってこうした経験を子どもたちに伝え、同じ過ちを起こさせないようにする。それが私のするべきことだ。
「宮河や武田も頑張っているらしいし、お前たちには期待しているぞ。全員揃って志望校に合格してこい」
「はい。で、では失礼します」
担任の先生との話を終えた私は、帰り支度を整えて昇降口へと向かう。ちょうど晴香も靴を履き替えて下校しようとしていた。
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