どんな風になりたいか 前編

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「あ、晴香。今帰り?」 「ええ。風もかしら?」 「そうだよ。せっかくだし途中まで一緒に帰らない?」 「もちろん良いわ」  私は晴香と一緒に駐輪場に赴き、自転車に乗って校舎を後にする。部活が無くなったことで随分と持ち物が減り、自転車を漕ぐのもかなり楽になった。 「こうやって誰かと帰るの久しぶりかも。晴香はこの後練習するの?」  「ええ。今日はジムで筋力トレーニングを中心に行うわ」  プロ野球選手を目指している晴香は、来月十一月に行われる入団テストに向け、部活を引退してからもずっと練習を続けている。木場監督からはいつでも野球部に顔を出して良いと言われているそうだが、基本的には別の場所で練習しているらしい。色々な考えがあってのことだとは思うが、少し意地の悪いことを言うと、木場先生がいると集中できないのも一つの理由だろう。詳細については乙女の秘密である。 「やっぱり本気でプロに行く気なんだね。合格率はかなり低いって聞いたけど、晴香なら絶対大丈夫だよ。私たちの世代で一番上手だって言われてるしね」 「ありがとう。けどそれとこれとは話が別。とにかくテストで持てる力を出せるよう、今は鍛錬を積むだけよ」  晴香は引き締まった顔つきで言う。彼女の瞳はいつも目標をしっかりと捉えていて、本当にかっこいい。
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