第一部:ドナドナ編

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第一部:ドナドナ編

「ミコゼ訓練生、この後残りなさい」 「はっ!承知しました。」 銃火器演習中に実ににこやかな教官殿による居残り宣言を受け、嫌な予感がひしひしと立ち込める。特に何かをやらかした覚えもなければ、褒めてもらう覚えもないのに隠しきれない喜色を私に向ける教官殿には悪いが、悪寒以外の何物も感じはしない。 「……おいおい、いったい何をやらかしたんだ?」 「知るかよ。私がいい子ちゃんなのはファルが一番知ってるだろ。こわいこわい」 「いい子ちゃんって自分で言うのかよ。ヤンキーみたいな頭して」 「うるせぇ!どこからどう見てもいい子ちゃんだろーが!あぁ、むりこわっ。帝国中の全弾丸を撃ち尽くすまで終わらなければいいのに」 という私の願いもむなしく、あっさりと演習が終わり至極にこやかな教官に連れられて普段は足を踏み入れない応接室へ連行される。 気分はまさしくドナドナ。思うにいい子ちゃんぶってはいたが、頭髪については確かにご指摘を食らう可能性を秘めている。正式に軍人として出荷される前にちょっとぐらい遊んだっていいじゃん?っていうチャラけた発想がこの様だというのなら、今すぐこのアシンメトリーをシンメトリーに切りそろえてきますとも。 とはいえただの身だしなみチェックに引っ掛かっただけなら、教官殿がにこやかであるはずもないし、私をわざわざこんなところまで連れてくるはずもない。 であるならば何なのか? どうかそのドアを開く前に何故ここに連れてこられているのか教えていただけはしませんか教官殿!という念は全く通じずにいとも簡単に開けられるドア。 「ミコゼ訓練生、入りなさい。」 「はっ!失礼いたします。」
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