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(はっ!)
春香は目を覚ました。頭がズキズキする。
意識の中にまどろみを漂わせながら、椅子に座っていることを理解した。
真っ暗な空間。ここはどこだろう。
立ちあがれ……ない。足が上がらない。両手も何かで固定されていた。
じょじょに目の前が明るくなっていく。空間に光が満ちてきた。
視界に広がったのは、映画に出てきそうな、広々とした洋室と、白いテーブル。そして自分同様、椅子に座らされている人たちだった。
テーブルを囲み、均等な間隔を置いて座らされているのは全部で5人。奇妙なのは、お互いに赤い頭巾と、赤いマントを装着されていることだ。
頭巾のせいで、お互いに顔をうかがうことはできないけど、皆、意識はあるようで、首を左右に動かし、状況を確認しているようだった。
「これは……」
多分、その類の言葉を言いかけたのだろう。春香から見て右の赤ずきんが、がくん。と前のめりになった。
他の赤ずきんも、首を左右に動かしたり、もどかしそうな動きを繰りかえしている。
私たちは座っている椅子に、両手足を固定され、さらに口にも、拘束具をつけられていて喋れずにいた。
ジェスチャーで相手に何かを伝えることもできない。
ふと気づく。私たちの頭上に、大きなモニターがあった。
首は固定されていないから、見上げればそれを視ることができる。モニターはどの角度からでも見えるようになっていた。
何が始まるのだろう。最初はガチャガチャ暴れていた人も諦めたのか、おとなしくなった。
その時──モニターに電源が入り、同じく赤ずきんのシルエットが、画面に登場した。
「画面映ってます? 音声正常? はい! 早速ですが皆さまには今から『赤ずきんゲーム』を行っていただきます」
赤ずきんゲーム? 聞いたことない。他の4人を見ると首を横に振ったり、無反応だったり、反応は様々。首を振っている人はなんだろう。知らない? やりたくない? 言葉って大事ね。全然分からない。
「童話の赤ずきんをご存じない方はおられないと思いますので、説明は省きます。さて皆さまは『人狼ゲーム』をご存知ですか?」
モニターの音声に、3人の赤ずきんが、首を横に振った。私は知っている。もう1人も、頷いていた。
「ぶっちゃねパクリです。ルールは多少違いますけど」
画面が切り替わり、茶色の封筒が映し出された。
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