深海への階段

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そう、今思い出しても信じられない。 あの花田さんが… 温厚な微笑みの貴公子のような花田さんが… あんな強引な…キス。 そして、それ以上に信じられないのが、その時、まるで応えるように目を閉じてしまった自分だ。 私は彼氏と別れたその日に… 顔を真っ赤にしたかと思えば、次は青ざめて深くため息をつく私。 そんな私を見て、美来は腕を組んで背もたれにもたれた。 「また今、冷静になってる。 花田さんに無理やり奪われてドキドキしたでしょ? 正平のことは吹っ飛んだんでしょ? ならいいじゃない! このまま突っ走ってみれば?!」 「無理やり奪われたなんて言わないで! そんなこと言ったって… まだまだ整理できてないの。 だって別れたの、3日前だよ? 花田さんは私の癒しではあったけど… あんな風になるなんて…」 「…赤鬼と青鬼が交互に憑依してるわね」 またも真っ赤になる私を見て、にやけながら美来が言う。
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