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うっすらとそんなことを考えながら、動かない足に力がこもる。
「…行って?」
正平の隣にいた若い女の子。
彼女がそう言って、正平から腕を離した。
未だ困惑の表情を浮かべる正平は、私から彼女に目を移すと、コクンとうなずいた。
え?何?
彼女は、私の方を向いて、深々と頭を下げると、そのまま1人で駅の方へと向かって行った。
今度こそ立ちすくむ私に、正平が一歩一歩近づいてくる。
「…優香。
今、いいかな。
大事な話があるんだ」
今日は金曜の夜。
仕事終わり、帰ったら1人で晩酌して、撮り貯めたドラマを見ようと思っていた。
そのためにコンビニで買ったビールが入った袋を、気持ちばかり隠して、私は小さくうなずいた。
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