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近くの喫茶店に移動して、私たちは向かい合う。 20時過ぎた喫茶店。 周りに他の客は少なくて、小さく聞こえるBGMがやたらと耳に響いた。 ホットコーヒーを2つ頼み、運ばれてきてもなお、正平はうつむいたまま座っている。 口を開けば、私は声が震えてしまいそうだったから。 私からは声を出せなかった。 「…彼女とは…」 いつもとは違う、今にも消え入りそうな声で正平が話し始めた。 「彼女とは3ヶ月ほど前に知り合ったんだ。 同じ部署に入社してきた後輩で… 同じ班のメンバーになって、営業とか回るうちに… 正直、惹かれた。 彼女も同じように思ってくれてたみたいで…」 わけのわからない馴れ初めを聞かされている。 ほんの少し冷静になった私は、フッと小さく鼻で笑った。 「彼女には優香のことも話してたんだ。 5年付き合った彼女がいるって。 …それでもいいって言われた。 その言葉に甘えてしまったんだ。 俺が弱かったから… 優香にも本当のこと言えないまま、中途半端なことをした… こんな風に優香を傷つけてるようなマネして…」
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