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『銃声』
曇り空を切り裂くように銃声が響いた。
銃声から逃げるように一斉に走り出す。
砂を踏む音が地面に響く。ひたすらに足を前に繰り出す。そうしなければ追いつかれてしまう。
群衆が叫ぶ。拳を振り上げる者、涙を流す者。手を合わせ、祈るように様子を見守る者。それぞれが走り去る人々の背中を、視線で追っている。自分たちに彼らを手助けすることは出来ないと分かっているからだ。
少年はその身に大きすぎる音を背負いながら走る。地面を踏みしめ、ひたすらに前へ。
息が荒くなってくる。汗が湧き出し、疲労感が足に溜まる。なんだか妙な匂いもする。喉の奥から何かが込み上げてくる。それでも進まなければならない。敵から逃げ切らなくてはならない。
白く輝くラインが見えてきた。あのラインを超えれば安全圏だ。
最後の力を絞り出すように白線へと向かう。後ろから迫ってくる敵を振り切るように白線を踏んだ。
再び鳴り響く銃声。
「1着赤組、2着白組、3着赤組、4着白組です!みなさんお疲れ様でしたー」
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