元旦の朝

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「私、気になるから、先に池、見に行ってくるわ」 お春ちゃんがシルバーカーを押してきました。 「お春ちゃん! 本当に怒るわよ!」 「なんでや? まあちゃんは心配と違うんか? 「心配よ。でも、池は違うと思うわ」 「どうして?」 「いや、私が死ぬんやったら、池かなと思うねん。ま、私らの歳やから足も上がらんから池の柵、越えられへんし無理やけど、吉川さんはまだ若いからいけるん違うかなと思うんや。」 まばあちゃんはため息をつきました. 「ため息なんかついて、じゃあ、まあちゃんはどこにいると思うん?」 「え? わたし?」 「そやで、ちゃあんと当たりをつけんと、行き当たりばったりやったら見つからへんで!」 まあばあちゃんはしばらく悩んだ後、 「私、お寺にいると思うわ」 「お寺?」 「ええ、お花ちゃんがお掃除のお手伝いしてるお寺」 それを聞いてお春ちゃんはポンと手をたたきました。 「ホンマや。あっこご主人亡くなったし、奥さん、優しいから。行ってるかもしれん。行ってみよ!」
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