”嫉妬の赤”をあたしに

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薄々、気付いてはいた。 竜也の気持ちがどんどん離れていくのが、あたしには分かっていた。 付き合って二年だし、きっかけは竜也からのナンパだったし。最近、竜也の職場に十九才の女の子が入社してから、ずっと楽しそうにしてるのも分かっていた。 でも、何となく問い詰められなかった。言えば言うだけ、竜也が離れていくのが早まるだけだという気がした。 死ぬほど好きだって訳じゃないけど、くしゃっと笑った顔が好きで、それがキラキラしているように、あたしには見えた。 海がよく見える、あたしのアパートの部屋で、冷房をとんでもなく効かせて毛布にくるまって、 「夕日が眩しいね」って笑い合うのが好きだった。 この間の美術館も、本当は一緒に楽しみたかった。 竜也から別れを告げられたのは、美術館に行った翌週だった。 メッセージアプリで告げられて、それでおしまい。 一応、他に好きな子が出来たのか聞いたけど、何となくはぐらかされてしまった。そしてそれが、逆に今自分以外の子に興味が移ってると言う確証でもあった。 問い詰めたいとも、怒り狂いたいとも思わなかった。 ナンパで付き合ったにしては、よく続いた方なんだろう。 傷ついてない、そんなに傷ついてない。あたしは仕事に力を入れようと、一生懸命生きることにした。
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