”嫉妬の赤”をあたしに

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あたしは、キラキラしたものが好きだ。 宝石、スパンコール、ラメがたっぷり入ったアイシャドー。 だからネイリストになったし、身に付けるものも、いつも派手にしていたい。 毎日キラキラを見ていたいあたしが、ネイリストとして売れっ子になって一人前に店を持つためには、お客のニーズに合わせてネイルのデザインをしたり、いろんな話を出来るようにならないといけない。あたしは、キラキラした世界をもっともっと知りたかった。だからあたしは、貴重な休日の竜也とのデート先に、美術館を選んだ。 展示品の区画に、一ヶ所だけ別格な空間がある。 そこの前だけ、警備員が特別に立っていて、注意書きの立て札も立っている。 『こちらの展示物鑑賞の際は、警備員からお声かけさせて頂く場合がございます。ご了承ください』 立て札には、そうプリントアウトされた紙が貼ってあった。 「竜ちゃん、見て、あたしが一番見たかったやつ……」 あたしは竜也の腕を引っ張って、警備員の前を通った。警備員はチラッとあたしたちを見たけど、なにも言われず先に進めた。 部屋の中央、ガラスケースに入れられた、赤い、赤い、真っ赤な宝石が眩しいネックレス。 あたしが見てみたかった宝石。 『アヴェンターク夫人の首飾り』が、静かに展示されていた。
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