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7月の離婚式
やっぱり、黒のスーツにすればよかった。
招待客をざっと見渡して、私は軽く後悔した。
「弔事ではございませんので平服でお越しください」
と招待状には書かれていたけれど、言ってみればこれは夫婦の愛の葬式なのだし、七夕だし……と悩み抜いて、最終的に浴衣を選んだのだ。
無難な選択のつもりだったのに、会場にざわめく人々は全体的に黒っぽい服装をしていて、赤い金魚柄の浴衣のわたしは浮いていた。
それにしても、あの夫妻の人脈の広さには驚かされた。
親戚や会社の人を呼ぶにはきっと気まずすぎるだろうから、これらのほとんどはお互いの友人なのだろう。
セレモニーホールの会場は、100人を超える招待客でいっぱいだ。
談笑しているグループの他は、所在なさそうにしている人が多い。わたしもそのひとりだ。
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