７月の離婚式

夫妻はふたりでひとつのハンマーを握った。
ケーキ入刀のパロディーだろう。さすがにこれは悪趣味な気がするが、赤の他人に戻ることをこれほど明快に示す行為も他にないかもしれない。

何人かがスマホのカメラを構えてふたりに近寄っている。この雰囲気の中でそんなことができるなんて、よほどの近親者なのだろう。
たしかに今日いちばんのハイライトと言えるシーンには違いない。

「それでは、お願いします！」
司会の声が響き、ハンマーが振り上げられる――はずだった。
「ちょ、ちょ、ちょっと待って」
あの人が声を発した。
会場がどよめき、元妻は目を見開いて元夫を見た。