7月の離婚式

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「まゆ子は良き妻でありました。諸々の事情があり、別々のレールの上で幸せになる、ただそれだけのことです。今まで本当にありがとうございました」 たどたどしく読み上げた便箋を畳み、あの人は妻に向かって深々と頭を下げた。 今日いちばんの拍手が起きた。 続いて、元妻がスタンドマイクの前に進み出た。便箋は手にしていない。 「忠義様。私はあなたが嫌いです」 場内の空気がぱりっと固まる音が聞こえた気がした。 「『嫌い』の意味? そんなものはどうだっていいです。嫌いなものは嫌いです。共働きなのに、自分だけ家事をしない。旅行に行ってもスマホばかり見て、映画館では爆睡していました。申し訳ないですが、美化できるほどの思い出もありません」 (りん)と顎を上げて、元妻は歯切れよく喋り続ける。 あの人は微妙な表情のまま硬直していた。 さっき泣いていた初老女性も呆然としている。 湿っぽい旋律を垂れ流すBGMがひどく滑稽に感じられた。
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