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序話「なにもない、なんでもある場所」
私のパパは”顔文字”で、ママは声と形を持たない”異形”だった。
電脳世界のプラットフォーム。
私は、向こう側にある異世界へと飛び立つまで、そこで育った。
『月は死神の目だ。だから満月の夜にかぐや姫も消えていったんだ。いいかい、美しく見えるものは全て精神病だ。刺されても痛くないぞという顔を浮かべた悪の兵器なんだ』
「うん、パパ。分かった」
『何も、信じてはいけないよ。お前は清い。お前の肉体は尊い。そして何より美しい。だからこそ、世界はお前を毒殺しにかかるだろう』
これが、パパとの最後の会話になる。
「うん、私は世界に殺されるんだね。分かった。そうならないようにすればいいんだね」
『……ああ、愛しき我が子よ。お前ほど馬鹿で贅沢で──
──悲しい命はない』
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