第十六話

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第十六話

 ──あーあ。  助けるはず、だったのにな、私。みんなのこと。  「……おねえ、ちゃん……?」    サチが消え入りそうな声で、そう呟いているのが聞こえる。  憎い男の声が耳朶に蘇ってくる。  私を嘲笑う声、人間の温度など微塵も感じさせない冷徹な声色。  走馬灯というのはこういうことを言うのだろうか、痛みなど感じないのに、なぜか全身が冷えて冷えてたまらない。脳髄や脊髄の底から自分自身が凍っていくような気がした。  舌の上でなんとか滑らせる言葉。  出そうとしても出ない声。  私はまた、自分の命に何もできないままでいるのだろうか──?    「……!……ッ!」  私は声をつまらせる。サチ、シン、みんな──。動かぬ死体が辺りに散らばる中を、私は這って進んでいく。出口は、もうすぐそこに開けているのだ。    「ぁ……ア……ッ!……!!!!!……!」    「……」    目の端で揺れる特徴的な髪の色。それが何色であるかさえ、今は認識できない。    ここは豪炎の中。  自ら放った火が、こんな形で収束するなんて。    冷たい機械の籠に包まれる知能じゃなくて人間に生まれ変わったのなら、ちゃんと痛みを感じることのできる「人間」になりたかった。    
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