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そこからミザリが口を開くまでの間、まるで映画のドラマティックシーンまでを一秒一秒カウントダウンするかのように、重々しく心臓は揺れていた。
「本当に聞きたいのですか?」
ミザリの顔に咲いた怪物が、ゆっくりと今この瞬間首元にまで芽吹いたのが分かった。
「……うん」
しばらくの沈黙のあと私がこくりと頷くと、ミザリはなぜか意外というように口元に手を当てた。
「……お嬢様、お言葉ですが人間に成り立ての体にわたくしの殺人話は少々堪えると思われます。しかし貴方様が望むのなら、わたくしの子宮が機能を終える前までにお話致しましょう」
そう、わたくしが救済される前に。
「それって、いつになる?」
私は彼女と同じように口元に手を当てた。それより先は問いを投げるのをやめた。「追及するのはここまでにしておいた方がいい」──と、頭のどこかで誰かの声がしたのだ。
ミザリは一旦カーテンの外に出て、車椅子をベッドの脇へと寄せながら視線を私から外してこう言った。
「さあ、いつになるでしょうか。もしかしたら、その時はもうすぐそこまで来ているかもしれませんね」
──どうぞ乗ってください、院内を案内しましょう。
こうして、白銀の髪を揺らして高揚の声を上げるような、そんな大罪人たちとの生活が始まった。
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