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「あんたまさか……!」
恋愛なんてしなさそうなのに。
『ちがうちがう、あんたの目から見て権吉くんはどう見えてんのって話だって』
「言われてみると確かにかっこいいよね」
返事までに間があった。
『恋愛対象には?』
重要な質問なのか声を低くしていた。わたしは素直にいう。
「わたしが? 権吉くんに?」ちょっと想像できなかった。「ないない! タイプじゃないもん!」
『それよ』
トーンが戻った。
「……どれ?」
『爽くんのあんたに対する認識』
ちょっと考えて、腹の底から怒りが噴出する。
「千慧ぇぇぇぇぇぇっ!」
『私にキレてもしょうがないでしょ』
「ちくしょう……わたし、がんばる!」決意の言葉を口にする。「がんばって権吉くんのこと好きになる!」
『待て』
わたしが権吉くんを好きになったところで爽くんがわたしに惚れるわけじゃない、と懇々と諭された。やがてぼそりと。
『あんたは最大公約数みたいな恋愛ばっかりだったけど、爽くんは素数な恋愛が好みなのかもね』
わたしはわかったふりは嫌いだったからこう答える。
「よくわからないよ」
というかよくわかるひとって、いるのかな。
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