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店員さんとも顔なじみになって何も言わなくてもワンドリンクのアップルジュースが出てくるようになった。半分ほど残ったグラスのなかで温くなっている。
昼の部のわたしたちの退店時間が近づいている。ふちがぼろぼろになったカードを手に顔を見合わせる。テーブルと体の間隔を広げようと身じろぎするけどチェアの足がまるで滑らない。しかたなく手でつかんで後ろに動かした。
座りなおす。
「ダウト」
あなたの声は権吉くんが差し出したカードを受けてのものだ。
わたしがしにがみが三枚溜まってからもゲームは進み、気づけばあなたはしにがみ二枚とその他が数枚。千慧はばらばらに五種類のカードが数枚ずつ。権吉くんはからすが三枚とあくまが二枚。わたしはしにがみ三枚、どっぺるげんがあ三枚、くろねこ二枚、がいこつ二枚だ。
あなたはたったいま三枚目のしにがみを権吉くんから受け取っていた。
無表情に手札を見返していたあなたは一枚のカードをわたしに差し出す。ぽつりと。
「しにがみ」
わたしを見ている。わたしも見返している。
そもそもわたしはどっぺるげんがあでも負ける。これ以外にどっぺるげんがあは場にないから、あなたが持っている可能性は高い。それをしにがみと偽って出せば、わたしにうそを見抜かれたところで痛くはないはずだ。
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