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昔がたり
その年は、咲き出したのが少し遅かった桜の花弁が舞い落ちる春
母、照子は早朝、ICUで兄に見守られながら空へと旅立った。
4日連日に病院へと容態を見に行って、疲れがたまっていたのか家に帰るなり深い眠りに落ちていた。
深夜、兄から電話がきた。
「病院から電話があったんだけどさ」
「……ん」
「お前行ける?」
「……ん?!」
「あぁいいや、俺行ってくる」
「……ん」
そのまま携帯を放り投げ、再び眠りに落ちていく。
朝になり再び兄から電話「危ないから、すぐ来てくれ」
慌てて子供達を起こし元旦那を起こして、布団を上げてる時に
『………あっ逝った……』その時はなぜか解った。
すぐさままた電話「今……息を引き取ったから……慌てないでゆっくりこいよ」
病院についたら、兄が照子は霊安室にいるという。
上の娘と2人で入っていくと……
ストレッチャーに乗せられた照子が……いや照子の亡骸がいた。
生前伝えることが出来なかった言葉。
「そこで聞いてるでしょ?お母さんとお父さんの子供で良かった。産んでくれてありがとう。幸せだったよ」
信じられなかった……母は死なないと漠然と思ってた。
かれこれ13回忌なんだね 。
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