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 資料を受けとったとはいえ、操はこのとき、この仕事を受けるつもりは少しもなかった。  ただ、毎回入り口にも入らずに話を断っていることの、洋一に対する後ろめたさと、今回の案件への興味とで、資料くらいは読んでみたい気になっていたのだ。  しかし洋一はにわかに満足そうになった。 「どう? やっぱり血が騒ぐだろう」 「リハビリには良さそうですね」 「それでいいから」  そのあとは、近況の報告と、通信社の内輪の話題を交わして、終わりとなった。操は、茶封筒の資料をリュックに押し込むと、地下鉄の駅で洋一と別れた。
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