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「このひと、ギャンブル、手を出してます」
最初の男が畳みかけるような口調で言った。
「証拠はあるの。いや、……どうしてそう思うのか?」
操は早くけりをつけたい思いが先走りながら、言った。
そのとき、若いアフリカ系の労働者が、ポケットから何か光る細いものを取り出した。
それはただのシルバーのボールペンだった。
なのに、操は凍り付いたようにそれを凝視していた。
それはただそれだけの事件だった。
疑いをかけられた労働者は、身の潔白を証明するために、ポケットのものをすべて出し、さらにポケットを裏返して見せた。
その後、この4,5人の労働者は操を巻き込んで荷物置き場に移動しようとしたが、操一人が青い顔をしてそこに居残った。
結局、あとで聞いた話では、お金は最初に騒ぎ立てた労働者のリュックの底から出てきて、彼は大いに面目を失ったという顛末だった。
だが、この事件は、操の忘れていた感情を、いや恐怖を、再びよみがえらせてしまった。照り付ける太陽とも相まって、その日は吐き気に苛まれることになったのである。
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