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 テレビではいとも簡単に人が死ぬなぁ。  それに気づいて、操はあまりテレビを見なくなった。  簡単に、刺したり刺されたり、痛みもにおいも感触も死に物狂いの力もなく。  それはドラマなどのフィクションだけではない。  戦場の映像も、カメラの向こうの現実であるにもかかわらず、同じように消費されている。  かつてはそれを世に訴えたいと思って、一度は目指した道があった。  けれど、直接は自分がその中の一人になるにおよんで、そしてそのとたん、急に生の感情に支配されて、意欲は失われた。  取材と称してカメラを携え戦場に行って、そして当事者になった途端、急に目覚めておじけづく。自分は滑稽な存在である。  ああそうだ。  自分はもともとかなり臆病な子供だった。その証拠に、子供のころ、夜布団に入ると、不気味な規則正しい音に怯えてなかなか寝付けなかったのだ。今思えば、それは自分の心臓の音。  その滑稽さと、今の自分は通じているような気がした。  こんな人間が取材先で信頼されるわけもない。  だから、さっきまで作り笑いを浮かべていた人間が、背後から切りかかってくるようなことにもなる。
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