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 『資料は読んだか』  「まだです」  『ばか!』  電話を切られてしまった。  操は一人で肩をすくめると、無意識にベッドを降りて、机の横に放りっぱなしになっていた、厚い茶封筒を取り上げた。  きちんと目を通してはいなかった。が、いくら何でも読みもしないで放置するのは、確かに失礼だ。  操は一気に束を引き出し、胡坐をかいて、ぱらぱらとめくり始めた。  新聞、雑誌、ネット記事のコピーが入り混じっている。  几帳面に、報道日順に並べられていた。  洋一は、ざっくりしているようでいて、仕事には厳しい人間だ。その洋一が集めたものなら、安心して読める。  そう思いながら、操は、つくづく自分は横着で、ジャーナリスト向きではないと自嘲していた。  しかし、内容はごくありふれた事件のようでいて、なにか興をそそられるものがあった。  いつしか、操は手帳を取り出してメモを取り始めていた。
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