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 数日後。  私鉄のホームに操はいた。  ごく普通のカーキ色のポロシャツにベージュのチノパン、リュックは不釣り合いなほどに大きい。  スマホに目を落として、デジタル版のニュースに目を通す。  やがて、電車が滑り込み、操は乗り込んだ。人はまばら。朝の下りなら当然である。リュックをわきに置いて、操はさっき売店で買った弁当を食べ始めた。  これから向かうのは、神奈川の、静岡に近い方の街である。  いうまでもなく、そこが事件の現場となった場所だ。  できるだけ安いビジネスホテルをすでに予約してある。  操は国内取材は、あまりしていない。洋一が言っていたように、したとしても公害訴訟などで、実は国内の現場の取材はほとんどなかった。  今回、洋一には、『経験を捨てて一からやれ』と言われている。  実はこの言葉に背中を押されたといっても過言ではない。自分をセーブするものを取り払ってみると、それはかなり魅力的に思えた。  しかも、今回はいわばこれといった期限のない取材で、いかようにも組み立てることができる。操は今は、洋一に感謝しているのだった。
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