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「まあ、ちょっと用があって」
操はあいまいに答えてもう一度店内を見回した。
つやつやのカウンターがあり、テーブル席が4つほどの小さな喫茶店。
カレンダーやら、雑貨やら、時計やらが雑多に飾られている。いかにも田舎めいた雰囲気である。しかし、なにか落ち着くところがあった。
「何時くらいに戻りますか」
「ホテルのチェックインの時間が来たら、持っていくので。それまでの間」
「了解です」
喫茶店を出て、とりあえず、駅の前から通りを歩いてみることにした。
さて、チェックインの時間、3時の少し前に、操は店に戻った。そこには相変わらずさっきの女の子がいた。
操の顔を見ると、ほっとしたように顔をほころばせる。
「よかった。携帯の連絡先も聞かずに荷物を預かるなんて、うっかりしてました。マスターに怒られちゃった」
「それは悪かったね。ぼくもうっかりしてた」
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