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 「いや、ちがうよ」  操は笑う。  「ちょっとゴミ記事書きをしてるライターなんだ」  「ふうん」  そこで、操は美知を少し挑発したいような、妙な気分になり、つい、余計なことを口走ってしまった。  「テレビにネタを売ったことはある」  「わあ、すごい」  もちろん、通信社時代に、映像を売ったのである。  美知はまだ何か言いたそうだったが、会計にきた客の対応をせざるを得なかった。  操は新聞を戻し、自分も席を立った。     「自転車、借りる?」  会計をしながら、美知が聞く。  「いや、今はいいよ。ありがとう」  「はい、じゃあ、またよろしく」  美知はかなり人懐こい性格のようだった。いや、客に対する愛想が上手なのか。それでも、はきはきした美知のようすは、感じのよいものだった。
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