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 上山和夫は、薄っぺらい座布団を操に勧め、自分でもその上に座ると、先に口を切った。  「皮肉なもんですね。私みたいな者が、成功した金持ちの末路を見るとはね」  その言葉には、皮肉めいた調子は全くない。  「人生、どこで落ちるか分かりゃしない」  操は断りを入れてから、レコーダーのスイッチを入れ、手帳を広げた。    「そうあらたまれると、なんといっていいか」  「あなたの見たこと、感じたこと、考えたこと、なんでもいいです。好きに話してください。ただ、勝手に話せと言われても、やりづらいですね。質問をします。単刀直入に、そのとき目撃したものを、些細なものでもいいので教えていただけませんか」  「正直、刃物があんなにあっさりと、人の身体に食い込むとは、思ってもいなかったね。  あんた、関口さんが、想像するほどの衝撃は、正直なかったよ。  絵としては、あっさりとした、冗談みたいなもので。  いや、もう少し順番にいかないと、分からんかな」  上山は座りなおした。
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